ドリップ 4 6は、注ぐお湯を「前半40%」「後半60%」に分けて考える淹れ方です。味の方向性と濃さを切り分けて調整できるので、家でも狙った味に寄せやすくなります。
ただ、手順だけ真似すると「薄い」「酸味が立つ」などの戸惑いも起こりがちです。原因の多くは、豆の挽き目や湯温、注ぐリズムが毎回ばらつくことにあります。
この記事では、考え方の要点から、器具の準備、基本レシピの流れ、失敗したときの直し方までを、生活の中で再現しやすい言葉で整理します。まずは1回、同じ条件で淹れられる状態を作るところから始めましょう。
ドリップ 4 6(4:6メソッド)の考え方と味の決まり方
この方法の核心は、お湯の配分を「味」と「濃度」に分けて考えることです。
数字で整理すると判断が速くなり、結果として味の再現もしやすくなります。
4:6メソッドとは何か
4:6メソッドは、総湯量を2つのパートに分けて注ぐ考え方です。最初の40%は味わいの印象を作り、残りの60%は濃さを整えます。つまり、同じ豆でも「どんな味にしたいか」と「どれくらい濃くしたいか」を分けて決められます。
例えば料理で言うと、前半は味付けの方向を決める工程、後半は煮詰め具合を整える工程に近いです。順番に役割があるので、闇雲に注ぐよりも、原因と対策が結びつきやすくなります。
前半40%は味、後半60%は濃度という考え方
前半40%は、甘み寄りか、酸味寄りかといった「味のバランス」に影響しやすい領域です。ここで注ぐ量を2回に分け、1回目と2回目の配分を変えることで、印象を寄せていきます。甘みを出したいときは1回目をやや少なめにする、といった調整が代表的です。
一方で後半60%は、同じ豆でも「薄い・濃い」を動かしやすい領域です。残りを何回に分けて注ぐかで、抽出の進み方が変わります。回数が増えるほど、しっかりめの濃度になりやすい、という整理をすると迷いにくくなります。
再現しやすくするための3つの前提
まず、粉とお湯の量を必ず量ります。目分量だと、同じ手順でも結果が揺れます。次に、タイマーで注ぐ間隔をそろえます。一定のリズムは、味のブレを小さくする土台になります。
さらに、挽き目を極端に細かくしないことも大切です。この方法は粗挽き寄りで組み立てられることが多く、細かすぎると詰まりやすくなります。まずは「量る・時間をそろえる・粗挽き寄り」を前提にすると、調整が素直に効いてきます。
・総湯量を40%と60%に分ける
・前半40%は味のバランスを寄せる
・後半60%は濃度を寄せる
・量と時間がそろうほど、調整が分かりやすい
ミニQ&A:Q. 4:6は「注ぐ回数が決まっている方法」ですか。A. 回数よりも「40%と60%の役割」を守る方法です。まずは5回で練習し、慣れたら回数を微調整します。
ミニQ&A:Q. 味が薄いと感じるのは失敗ですか。A. 失敗と決めつけず、後半60%の回数や挽き目を見直す合図と捉えると、次の一手が選びやすくなります。
- 40%は味、60%は濃度と役割を分けて考える
- 量る・時間をそろえる・粗挽き寄りが土台になる
- 原因と対策が結びつくので、調整がしやすい
- 薄い・酸味が強いは「直し方がある」状態
必要な器具と準備
この淹れ方は、特別な道具が必須というより、基本を丁寧にそろえるほど安定します。
まずは「量る」「時間を見る」「お湯を用意する」を無理なく続けられる形にしましょう。
ドリッパーとペーパーをそろえる
ドリッパーは、家にあるもので始めて構いません。大切なのは、毎回同じ器具で同じ条件を作ることです。形が変わると流れ方が変わり、調整が遠回りになります。まずは1つに決めて、安定して淹れる経験を積むのが近道です。
ペーパーは、使う前に湯通し(リンス)をしておくと、紙のにおいが入りにくくなります。つい省略しがちですが、味の違和感が減ることがあります。サーバーも温めておくと、温度低下を抑えられます。
スケールとタイマーが「味ブレ」を減らす理由
スケールは、粉量と湯量をそろえるための道具です。味の調整は、基準が同じでないと効き方が分かりません。例えば粉が1g違うだけでも、濃さの感じ方は変わります。家庭で再現するなら、ここに投資すると一番手応えが出やすいです。
タイマーは、注ぐ間隔と全体の抽出時間をそろえるために使います。毎回のテンポがそろうと、味の違いが「配分の違い」や「挽き目の違い」として見えやすくなります。慣れるまではスマホのタイマーでも十分です。
豆・挽き目・湯温の基本を押さえる
豆は、最初は中煎り前後を選ぶと調整が分かりやすいです。浅煎りは酸味が出やすく、深煎りは苦味やコクが出やすい傾向があるため、初心者は振れ幅に戸惑うことがあります。まずは飲みやすいレンジから始めるのが安全です。
挽き目は粗挽き寄りを基準にし、詰まりにくい状態を作ります。湯温は、豆の焙煎度や好みで前後しますが、最初は90℃前後を目安にしてみてください。大事なのは、毎回同じ湯温に近づけることです。
| 用意するもの | 役割 | 初心者の目安 |
|---|---|---|
| ドリッパー+ペーパー | 抽出の流れを作る | まずは1種類に固定 |
| スケール | 粉量・湯量をそろえる | 0.1g単位だと便利 |
| タイマー | 注ぐ間隔と全体時間をそろえる | スマホで十分 |
| ケトル | 狙った場所に静かに注ぐ | 細口だと安定しやすい |
具体例:家にある計量カップで湯量を量っていた方が、スケールに替えたら味が安定した、というケースはよくあります。湯量のズレが減ると、同じレシピのままでも「毎回違う」が起きにくくなり、調整が素直に効くようになります。
- 器具は高価さより「同じ条件を作れるか」が大切
- スケールとタイマーは、再現の土台を作る
- 豆は中煎り前後、挽き目は粗挽き寄りから始める
- 湯温は一定に近づけるほど違いが見える
基本レシピを5投で覚える手順
ここでは、家庭で試しやすい「5回に分けて注ぐ」流れを軸にします。
まずは型を覚え、次に配分や回数を小さく変えて好みに寄せていきましょう。
粉20g・湯300gの目安レシピ
目安として、粉20gに対して湯300g(約15倍)で組み立てると分かりやすいです。総湯量300gのうち、前半40%は120g、後半60%は180gになります。前半は2回、後半は3回に分けると、合計5回の注湯になります。
最初は蒸らしを兼ねて、1投目を小さめに入れると進めやすいです。大切なのは、1回ごとの注湯量を量って揃えることです。ここが揃うだけで、味の違いが「作った違い」として見えやすくなります。
注ぐリズムと「円の描き方」のコツ
注ぐときは、粉の山の中心から外側へ、小さな円を描くように動かします。ただし外周ギリギリまで攻めると、粉が壁に張りつきやすくなります。中心寄りで、ゆっくり一定の細さを意識すると、流れが安定しやすいです。
注ぐ間隔は、目安として45秒前後で区切ると管理しやすいです。毎回きっちり同じでなくても構いませんが、「同じテンポ」を目指すほど調整が効きます。焦って一気に注ぐより、落ち着いて分けたほうが結果が読みやすくなります。
落ちるのが速い・遅いときの調整
落ちるのが遅いときは、挽き目が細かすぎる、注ぎが強すぎる、粉が偏って詰まっている、といった原因が考えられます。まずは挽き目を少し粗くする、次に注ぐ勢いを弱める、という順で触ると迷いにくいです。
逆に速すぎて薄いと感じるときは、挽き目が粗すぎる可能性があります。また後半60%の注湯回数を増やすと、濃度が上がりやすい方向に動きます。1回で大きく変えず、1つだけ変えて比べると、学びが残ります。
| 回 | 目安の注湯量 | 狙い | 時間の目安 |
|---|---|---|---|
| 1投目 | 40g | 蒸らし+味の土台 | 0:00〜 |
| 2投目 | 80g(前半合計120g) | 前半40%を完成 | 0:45〜 |
| 3投目 | 60g | 濃度づくり開始 | 1:30〜 |
| 4投目 | 60g | 濃度の積み上げ | 2:15〜 |
| 5投目 | 60g(後半合計180g) | 仕上げ | 3:00〜 |
具体例:最初の1週間は、粉20g・湯300g・5投・45秒間隔だけを固定してみてください。味がぶれる場合でも「条件が同じ」なので、挽き目を1段階だけ変える、湯温を2℃だけ下げる、といった修正が効きやすくなります。
- 粉20g・湯300gは覚えやすい基準になる
- 前半120gは味、後半180gは濃度と役割が分かれる
- 注ぐテンポと量を揃えるほど比較ができる
- 調整は1つずつ変えると原因が見えやすい
好みに合わせた調整と、よくある失敗の直し方
型を作れたら、次は「好みに寄せる」段階です。
失敗に見える結果も、直し方が分かれば一気に怖くなくなります。
甘みを出す・酸味を抑える微調整
甘み寄りにしたいときは、前半40%のうち1投目をやや少なめ、2投目をやや多めにする考え方が使えます。逆に酸味が立ちすぎると感じるときは、湯温を少し下げる、挽き目をわずかに細かくする、といった方向も候補になります。
ただし一気に大きく触ると、どれが効いたのか分からなくなります。まずは前半の配分、次に湯温、最後に挽き目という順で、1つずつ試すと整理しやすいです。
濃い・薄いは後半の回数で調整する
薄いと感じたら、後半60%を分ける回数を増やすと、濃度が上がりやすい方向に動きます。逆に濃すぎると感じたら、回数を減らして大きめに注ぐと、軽くなりやすい場合があります。ここは豆の状態にも左右されるので、少しずつ試すのが安全です。
濃度の調整は「後半の回数」と「挽き目」が主役です。湯量自体を変えるより、まず回数で動かすとレシピの軸が崩れにくく、比較がしやすいです。
初心者がつまずきやすい失敗とリカバリー
よくある失敗は、粉が偏ってお湯が一部だけを通ることです。注ぐ位置が外周に寄りすぎる、勢いが強すぎる、ドリッパーを揺らしすぎる、といった要因で起きやすくなります。まずは中心寄りに静かに注ぎ、ドリッパーは基本的に触らないと決めると安定します。
もう1つは、詰まりによる過抽出です。落ちるのが明らかに遅いときは、挽き目を粗くする、粉量を少し減らす、注湯を細くする、の順に試すと直しやすいです。結果が苦いときほど、落ちる速さを見直すと近道になります。
アイスコーヒーに応用するときの考え方
アイスにするときは、抽出液を氷で一気に冷やすのがポイントです。氷が溶ける分を見込んで、抽出する湯量を少し減らすか、濃いめに寄せる必要が出てきます。ここでも「濃度は後半で調整」という整理が役立ちます。
例えば、同じ粉量でも後半の回数を増やして濃度を上げ、氷でちょうど良い濃さに着地させる、という組み立てができます。冷やした後に薄く感じる場合は、まず後半の回数を増やす方向から試してみてください。
1) 粉量と湯量は量れているか
2) 注ぐ間隔はだいたい揃っているか
3) 落ちる速さが極端に遅くないか
4) 前半40%と後半60%の役割を守れているか
ミニQ&A:Q. 「薄いけど雑味もない」場合はどうしますか。A. 後半60%の回数を1回増やすか、挽き目を少しだけ細かくして濃度を上げるのが試しやすいです。
ミニQ&A:Q. 「苦くて重い」場合はどうしますか。A. 詰まりで過抽出になっていることがあるので、挽き目を少し粗くし、注湯を細くして落ちる速さを整えると改善しやすいです。
- 味の寄せ方は前半40%、濃度の寄せ方は後半60%が軸
- 調整は1つずつ、小さく動かすと迷いにくい
- 詰まりや偏りは、注ぐ位置と勢いで改善しやすい
- アイスは氷で薄まる前提で、濃度を先に作る
まとめ
ドリップ 4 6は、お湯の前半40%で味の方向性を作り、後半60%で濃度を整える淹れ方です。役割を分けて考えるだけで、薄い・酸味が強いといった悩みの原因が見えやすくなります。
まずは粉量と湯量を量り、注ぐ間隔をそろえて、同じ条件で淹れられる状態を作ってください。その上で、前半の配分や後半の回数、挽き目、湯温を1つずつ動かすと、好みに近づくスピードが上がります。
慣れてくると、同じ豆でも気分に合わせて寄せられるようになります。型を味方にして、家の一杯を安定させていきましょう。


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