コーヒー焙煎士という職業に興味を持つ人が増えています。「焙煎士」を名乗るために法律上の資格は不要ですが、知識と技術を体系的に身につけるための資格制度は複数あります。どの資格を選ぶかによって、学べる内容や取得にかかる費用・期間が大きく異なります。
この記事では、焙煎に関わる主な資格の種類と取得条件、費用の目安を整理します。副業や開業を視野に入れている方にとっても、自分に合う学び方を選ぶための参考になる情報を取り上げています。
公的な業界団体であるSCAJ(日本スペシャルティコーヒー協会)や全日本コーヒー協会(AJCA)の資料をもとに、現時点で確認できる情報をまとめています。各資格の最新の費用・日程・受講条件は、それぞれの公式サイトでご確認ください。
コーヒー焙煎士と資格の関係を整理する
焙煎士という職業と資格の関係は、初めて知ると少し意外に感じるかもしれません。日本では法律上、焙煎士を名乗るために特定の資格は不要です。ただし、知識・技術の水準を示すための民間資格制度が整備されており、業界団体・通信教育機関のいずれかを通じて取得できます。
「焙煎士資格」という名称の資格は存在しない
「焙煎士資格」という名称の国家資格や統一資格は、現時点で日本に存在しません。焙煎士として仕事をするために、免許や資格の取得が法律で義務づけられているわけではないため、技術を習得すれば誰でも焙煎士として活動できます。
ただし、コーヒーを商業的に販売する場合には、食品衛生法に基づく「食品衛生責任者」の設置が必要になります。これは焙煎そのものに関わる資格ではなく、店舗・事業の運営に関わる要件です。食品衛生責任者の取得要件については、各都道府県の保健所または食品衛生協会の公式サイトでご確認ください。
「焙煎士資格」の代わりに、コーヒー全般の知識・焙煎技術を証明する民間資格として複数の選択肢があります。どの資格も業界団体または民間機関が認定する資格であり、取得することで学習の成果を客観的に示せます。
民間資格でカバーできる範囲
焙煎に関わる民間資格が扱う内容は、大きく「知識系」と「実技・技術系」の2種類に分けられます。知識系は通信教育や在宅試験で取得できるものが多く、実技・技術系は会場での講習と実技試験が必要なものが中心です。
焙煎の技術そのものを評価する資格としては、SCAJ(日本スペシャルティコーヒー協会)が運営する「ジュニア・ローストマスター」および「サーティファイド・ローストマスター」があります。これらは焙煎機の操作、カッピング、生豆の知識など実践的な内容を含む資格で、SCAJの資料では商業焙煎に携わる方だけでなく開業希望者にも対応したプログラムとされています。
コーヒー全般の知識を体系的に学ぶ資格としては、SCAJ認定の「コーヒーマイスター」やJCQA(全日本コーヒー検定委員会)が運営する「コーヒーインストラクター」が広く知られています。焙煎技術の学習を始める前の土台として取り組む方も多くいます。
焙煎技術の水準を示す民間資格は「SCAJ系」「JCQA系」「通信系」に大別される
開業・販売を行う場合は食品衛生法の要件(食品衛生責任者など)を別途確認する
- 「焙煎士資格」という統一資格は存在せず、民間資格で技術・知識を証明する
- 焙煎の実技を評価するSCAJ系資格は会場での講習と試験が必要
- 開業・販売を行う場合は食品衛生法の要件を事前に確認するとよい
- どの資格が自分に合うかは、学習スタイルと目的によって変わる
SCAJ系資格のルートと取得条件
SCAJが運営する資格は段階的なステップアップ設計になっています。焙煎に特化した資格を取得するには、まずコーヒーマイスター資格の取得が前提条件になります。取得の順序と各段階の内容を整理します。
コーヒーマイスター(基礎)
コーヒーマイスターは、SCAJ会員を対象とした基礎資格で、2003年の協会設立以降に定着した資格制度です。SCAJの資料によると、2025年12月現在で7,406名を超える有資格者がいます。喫茶業・教育・食品会社など幅広い現場で活用されている資格です。
受講はSCAJ会員であることが前提です。テキストを使った自習ののち、スクーリング(実技講習)を1日受講し、認定試験に合格すると取得できます。資格の有効期間は取得後3年で、更新には手続きと更新手数料が必要です。受講料・日程の最新情報はSCAJ公式サイトのイベントカレンダーでご確認ください。
コーヒーマイスターは、後述する「アドバンスド・コーヒーマイスター」や「ジュニア・ローストマスター」取得への前提条件にもなっています。焙煎の専門資格を目指す場合、まずこの資格から学習をスタートするのが一般的な流れです。
アドバンスド・コーヒーマイスターとジュニア・ローストマスター
アドバンスド・コーヒーマイスターは、コーヒーマイスターの中級資格として2012年に開設された資格です。SCAJの資料では、スクーリング3講座(歴史と科学/SCAJ・生豆について/産業・経済と産地)と実習(スキルアップセミナー)1つの全課程を修了し、各認定試験に合格することで取得できるとされています。
スキルアップセミナーの実習として「焙煎(SCAJジュニア・ローストマスター資格講座)」が選択できます。この実習を修了・合格することで「ジュニア・ローストマスター」資格も同時に取得できます。スクーリング各講座の受講料はテキスト・実技・試験費込みで1講座あたり16,000円(2026年時点)とSCAJ公式サイトに掲載されていますが、変更される場合があるため必ず最新情報を公式サイトでご確認ください。
アドバンスド・コーヒーマイスターの有効期間はコーヒーマイスターの有効期間に準じます。マイスター資格を更新することで、アドバンスド資格も合わせて更新されます。受講は順番を問わず受けられ、取得期間の上限はありません。
サーティファイド・ローストマスター(上級)
サーティファイド・ローストマスターは、SCAJの焙煎技術資格の中で最上位に位置する資格です。SCAJの資料によると、受講資格はSCAJ会員であること、コーヒーマイスター有資格者であること、ジュニア・ローストマスター有資格者であることの3条件をすべて満たす必要があります。
講座は1日(9:30〜17:30を目安)で行われ、座学・焙煎実技・カッピング・筆記の各試験があります。2025年3月開催回の受講料はSCAJ公式サイトに28,600円(講義料込み)と掲載されていましたが、費用・開催日程は回ごとに変わる場合があるため、SCAJのイベントカレンダーで最新情報をご確認ください。
定員は1回あたり10名程度の少人数制で、先着順の受付となっています。商業焙煎に携わっている方だけでなく、開業を検討している方にも対応したプログラムとされています。
| 資格名 | 位置づけ | 受講資格 | 試験形式 |
|---|---|---|---|
| コーヒーマイスター | 基礎 | SCAJ会員 | 筆記・実技(スクーリング) |
| アドバンスド・コーヒーマイスター | 中級 | コーヒーマイスター有資格者 | スクーリング3講座+実習1つ |
| ジュニア・ローストマスター | 中級(実技) | コーヒーマイスター有資格者 | 実習(焙煎・カッピング・筆記) |
| サーティファイド・ローストマスター | 上級 | ジュニア・ローストマスター有資格者 | 座学+焙煎実技+カッピング+筆記 |
- SCAJ系資格は段階的な取得設計で、コーヒーマイスターが最初のステップ
- 焙煎実技を含む資格にはジュニア・ローストマスターとサーティファイド・ローストマスターがある
- 上位資格ほど受講資格が厳しくなり、実技試験のウエイトが大きくなる
- 費用・日程は回ごとに変わるため、受講前にSCAJ公式サイトで必ず確認する

JCQA系・通信系資格の特徴と選び方
SCAJ系以外にも、コーヒー関連の知識・技術を学べる資格制度が複数あります。全日本コーヒー検定委員会(JCQA)が運営する資格は、業界団体が関与する知識系資格として広く知られています。通信系資格は在宅で受験できるものが多く、学習スタイルや目的に応じて選ぶ余地があります。
コーヒーインストラクター(JCQA)
コーヒーインストラクターは、全日本コーヒー商工組合連合会が主催する資格制度で、3級・2級・1級の段階があります。全日本コーヒー協会の関連組織が関与する資格であり、業界団体との関係が深い資格として位置づけられています。
3級はコーヒーの基礎知識を問う内容で、受験費用は比較的低く抑えられています。2級・1級になるほど出題範囲が広がり、産地・焙煎・抽出などの専門知識が求められます。最新の受験料・日程・出題範囲は全日本コーヒー商工組合連合会の公式サイトでご確認ください。
焙煎に特化した実技試験は設けられていませんが、コーヒー全体の知識を体系的に学ぶ土台として活用できます。焙煎を含む幅広い知識を整理したい場合の学習ステップとして選ばれることがあります。
通信系資格の概要(コーヒーソムリエ・UCC匠の珈琲など)
通信教育で取得できるコーヒー系資格は複数あります。代表的なものとして、日本安全食料料理協会(JSFCA)認定の「コーヒーソムリエ」、UCCコーヒーアカデミーが認定する「UCCドリップマスター」(ユーキャン経由)などがあります。
これらの通信系資格は在宅受験が可能なものが多く、講座費用は提供会社や取得方法によって異なります。学習期間の目安は最短で数週間から標準4ヶ月程度が多く、忙しい社会人でもスケジュールを調整しやすい特徴があります。最新の費用・内容は各通信講座の公式サイトでご確認ください。
通信系資格の多くはコーヒーの知識全般を扱うものであり、焙煎の実技を直接評価するものではありません。焙煎技術の水準を客観的に示したい場合はSCAJ系の実技資格との組み合わせを検討するとよいでしょう。
焙煎の実技・技術を証明したい → SCAJ系(ジュニア・ローストマスター以上)
副業・開業の準備として幅広く学びたい → まず通信系やコーヒーマイスターから始めて段階的に進む
資格選びの3つの判断軸
資格を選ぶときは「何を証明したいか」「どのくらいの時間と費用をかけられるか」「実技か知識かどちらを優先するか」の3点を整理すると方向性が定まります。
焙煎技術を証明したい場合はSCAJ系の実技資格が有効ですが、段階的な取得が必要なため時間がかかります。まずコーヒーの知識を体系的に身につけてから実技を学びたい場合は、コーヒーマイスターや通信系資格から始めて段階的に進むのが現実的な順序です。
副業・開業を視野に入れている場合は、資格取得の並行として、食品衛生法の要件(食品衛生責任者)や、各都道府県の営業許可制度の確認を先に行うことをお勧めします。個別の事情については、各都道府県の保健所または食品衛生協会の公式窓口にご相談ください。
- 焙煎技術を証明したい場合はSCAJ系実技資格を段階的に取得する
- 知識習得を優先する場合は通信系やJCQA系から始められる
- 副業・開業を目的とする場合は資格と並行して食品衛生法の要件を別途確認する
- 最新の費用・日程は各公式サイトで確認してから受講を決める
学習の始め方と費用感の目安
コーヒー焙煎士の資格取得にかかる費用と学習時間は、選ぶルートによって幅があります。通信系から始めるか、SCAJ系に直接進むかによって、総額と期間が大きく変わります。ここでは、一次情報で確認できた範囲で目安を整理します。
段階ごとの費用の目安
一次情報で確認できた費用の例として、SCAJのアドバンスド・コーヒーマイスター講座(スクーリング)は1講座あたり16,000円(テキスト・実技・試験費込み)、サーティファイド・ローストマスター資格講座は28,600円(講義料込み)とSCAJ公式サイトに掲載されています。ただし費用は変更される場合があるため、受講前にSCAJ公式サイト(scaj.org)のイベントカレンダーでご確認ください。
通信系資格の費用については、提供会社によって幅があります。コーヒーマイスター資格(SCAJ)の受講料についても、SCAJ会員費用や教材費を含む詳細は公式サイトでの確認をお勧めします。資格取得にかかる総費用は、段階ごとに複数回の費用が積み重なる構造であるため、目的とする資格レベルまでのルートをあらかじめ確認しておくとよいでしょう。
学習期間については、通信系資格は標準4ヶ月程度が目安のものが多く、SCAJ系は各講座が年1回程度の開催となっているものもあります。SCAJのアドバンスド・コーヒーマイスター講座の3講座は、それぞれ取得期間の上限なく受講できますが、開催は各講座年1回程度のスケジュールです。
コーヒーマイスター登録にはSCAJ会員資格が必要
SCAJ系の資格(コーヒーマイスター・アドバンスド・ジュニア・ローストマスター・サーティファイド・ローストマスター)を取得するには、いずれもSCAJ会員であることが前提条件です。入会手続きと年会費については、SCAJ公式サイト(scaj.org)の会員登録ページで確認できます。
会員登録の費用・手続きは資格取得費用とは別にかかります。副業・開業を検討している段階では、まず無料で閲覧できるSCAJの公式情報や全日本コーヒー協会の資料で知識の全体像を把握し、その後に必要な資格ルートを判断するのが効率的です。
自家焙煎・開業をゴールに設定する場合の注意点
コーヒーの自家焙煎を事業として行う場合、資格取得だけでなく設備の準備も必要です。焙煎機は家庭用から業務用まで価格帯に大きな幅があり、開業規模によって選択肢が変わります。機器の仕様・価格は機種・メーカーによって異なるため、購入前にメーカー公式サイトや販売店での確認をお勧めします。
副業として焙煎豆の販売を始める場合は、食品衛生法に基づく営業許可の取得が必要になる場合があります。必要な許可の種類や申請手続きは販売方法(店舗販売・通販・マルシェ等)によって異なります。詳細は管轄の保健所または各都道府県の食品衛生協会の公式窓口でご確認ください。
費用は段階ごとに積み重なるため、目標資格までの総額をルート全体で把握しておく
開業・販売を行う場合は食品衛生法の要件を別途確認する
- SCAJ系の各資格は年1回程度の開催のものもあり、スケジュール管理が必要
- 通信系は比較的柔軟なペースで学べるが、焙煎実技は評価対象に含まれない
- 費用・内容は変更される場合があるため、受講決定前に必ず公式サイトで最新情報を確認する
- 開業を検討する場合は資格と並行して食品衛生法・許可申請の情報収集を進めるとよい
まとめ
コーヒー焙煎士には法律上の資格要件はなく、焙煎の知識・技術を証明する民間資格として「SCAJ系」「JCQA系」「通信系」の3つのルートがあります。焙煎技術を直接評価する資格はSCAJ系(ジュニア・ローストマスター・サーティファイド・ローストマスター)で、段階的な取得が必要です。
まず自分の目的を整理し、「知識の土台を作りたい」のか「焙煎技術を証明したい」のかによって、最初に取り組む資格を選ぶとよいでしょう。SCAJ系を目指す場合はまずコーヒーマイスターから、通信系で始めたい場合は各通信講座の公式サイトから情報収集を始めると次の行動が明確になります。
コーヒーの学びには正解の順序があるわけではありません。自分のペースで少しずつ知識を積み重ねることが、焙煎の技術と楽しさを長く続けられる土台になります。

