コーヒー豆の袋や商品ページで見かける「SHB」や「AA」「G1」といった表記。これらは、豆の品質や栽培環境を示す「グレード(等級)」の指標です。しかし、国によって基準が異なり、単純に数字が高いほどおいしいとは限りません。
この記事では、コーヒー豆グレードの基本的な意味や評価方法を整理しながら、主要生産国の表記の違いと注意点をわかりやすく解説します。スペシャルティやQグレードなど専門的な用語も、初心者の方が理解しやすいように丁寧に説明します。
これを読むことで、豆を購入するときに「どの表記を見ればよいか」「価格や味の違いはどこから生まれるのか」がわかり、自分の好みに合った一杯を選びやすくなるでしょう。
コーヒー豆グレードの基本:意味と重要性
コーヒー豆の「グレード」とは、豆の大きさや欠点の数、風味の品質などを基準にした等級のことです。ワインの格付けのように、コーヒーも世界中で生産国ごとに独自の基準が存在します。グレードを理解することで、豆選びの目安が見えてきます。
用語の整理(等級・規格・グレードの違い)
「等級」「規格」「グレード」は似た言葉ですが、微妙に意味が異なります。等級は主に豆の品質や欠点数に基づいた分類、規格は輸出などのために定められた取引上の基準、グレードはそれらを総合した品質評価を指すことが多いです。国や業界によって定義が異なるため、混同しないことが大切です。
歴史と背景:格付けはなぜ生まれたか
コーヒー豆の格付けは、19世紀後半に国際貿易が盛んになる中で生まれました。豆の品質を客観的に評価するため、輸出入時のトラブルを防ぐ目的があったのです。特に生産国では、豆の均一性と信頼性を確保するための仕組みとして発展しました。
主要な区分(スペシャルティ・プレミアム・コモディティ)
現在のコーヒー市場では、大きく「スペシャルティ」「プレミアム」「コモディティ」の3段階に分類されます。スペシャルティは風味特性やトレーサビリティが重視される高品質豆、プレミアムは安定した品質を持つ中間層、コモディティは大量流通向けの一般豆を指します。
表記の読み方の全体像と注意点
袋に書かれた「AA」「G1」「SHB」などの表記は国ごとの評価体系です。同じ「G1」でもエチオピアとインドネシアでは意味が異なります。数字が高ければ良いと考えがちですが、あくまで基準は国ごとに異なり、必ずしも味を保証するものではありません。
具体例:たとえばグアテマラでは「SHB(Strictly Hard Bean)」が最上位クラスですが、ケニアでは「AA」が最上級を意味します。同じアルファベットでも評価基準が違うため、購入時には「どこの国の基準か」を確認することが大切です。
- グレードは豆の品質・規格を示す目安
- 等級と規格は目的が異なる(品質評価と取引基準)
- スペシャルティは風味と透明性が重視される
- 表記の意味は国ごとに異なる
- 「高グレード=必ずおいしい」とは限らない
格付けの評価基準:何で決まるのか
コーヒー豆のグレードは、主に「豆の見た目」「欠点の少なさ」「風味の評価」で決まります。特にスクリーンサイズ(粒の大きさ)や標高、欠点豆の割合などが共通の基準として用いられます。これらの評価要素を知ると、グレードの背景がより理解しやすくなります。
スクリーンサイズ(豆の粒の大きさ)
スクリーンサイズとは、豆をふるい分けるときの穴の直径(1/64インチ単位)を示します。たとえば「スクリーン18」は直径7.14mmの豆を意味します。一般的に粒が大きい方が風味が均一に焙煎されやすく、高級品として扱われますが、産地や品種による違いもあります。
標高による区分(SHBなどの表記)
標高は風味を左右する重要な要素です。高地ほど昼夜の寒暖差が大きく、豆がゆっくりと熟すため、密度が高く味が引き締まります。グアテマラでは「SHB(Strictly Hard Bean)」が最上級を意味し、標高1,350m以上で育った豆に付けられます。
欠点豆の数と許容範囲
「欠点豆」とは、カビ、虫食い、割れなど品質を損なう豆のことです。国際基準では300g中に含まれる欠点豆の数でグレードを決定します。少ないほど高評価となり、スペシャルティコーヒーではほぼゼロに近い状態が求められます。
カッピング評価とスコア基準
カッピングとは、専門家が香り・酸味・甘味・後味などを総合的に評価する官能検査です。SCA(スペシャルティコーヒー協会)の基準では100点満点中80点以上がスペシャルティと認定されます。風味の一貫性や清潔感が重要な評価軸です。
精製方法・品種が与える影響
同じ農園でも、精製方法(ウォッシュト・ナチュラルなど)や品種の違いで風味が変わります。これらも間接的にグレード評価に影響します。精製が丁寧なほど欠点豆が減り、均一な仕上がりになります。
| 評価項目 | 主な基準 | 高評価の傾向 |
|---|---|---|
| スクリーンサイズ | 粒の大きさ(1/64インチ) | 数値が大きいほど高級傾向 |
| 標高 | 栽培高度(m) | 高地産ほど密度が高く風味が良い |
| 欠点豆 | 300g中の欠点数 | 少ないほど品質が高い |
| カッピング | 風味スコア(SCA方式) | 80点以上でスペシャルティ |
具体例:コロンビアでは「スプレモ(Supremo)」と「エクセルソ(Excelso)」の2種類があり、粒の大きさで区別されます。スプレモはスクリーン17以上で高級品とされますが、味わいは焙煎度や精製方法にも左右されます。
- グレードは主に物理的・官能的評価の組み合わせ
- スクリーンサイズは焙煎の均一性に影響する
- 標高が高いほど密度が上がり風味が締まる
- 欠点豆が少ないほど品質が高い
- カッピングで80点以上はスペシャルティ認定
国別グレード表記の読み方と落とし穴
コーヒー豆のグレードは国ごとに定義が異なり、同じ記号でも意味がまったく違うことがあります。多くの人が「AA」や「G1」といった文字を見て品質を判断しがちですが、これは国際的に統一された評価ではありません。ここでは地域別の特徴を整理し、誤解しやすいポイントを確認します。
中南米の表記(SHB/Strictly High Grown など)
中南米では標高による格付けが一般的です。グアテマラの「SHB(Strictly Hard Bean)」やコスタリカの「SHG(Strictly High Grown)」は、いずれも標高1,200〜1,500m以上の高地産を意味します。高地産の豆は硬く密度が高いため、焙煎で甘みと酸味のバランスが良くなります。
アフリカの表記(AA/AB/Top など)
ケニアやタンザニアなどアフリカ地域では、スクリーンサイズによる格付けが主流です。たとえば「AA」はスクリーン17以上、「AB」は15〜16を指します。AAの方が粒が大きく価格も高めですが、実際の味は精製や焙煎の工程でも変わるため、サイズだけで品質を判断するのは早計です。
アジアの表記(G1/G2 やマンデリンの規格)
インドネシアやエチオピアでは「G1(Grade 1)」が最上位とされ、欠点豆が極めて少ないロットを指します。特にエチオピアのG1は、選別精度の高さと独特の華やかな香りで知られます。一方、G2やG3はやや欠点が多く、業務用やブレンド用に使われることが多いです。
「No.◯」「スクリーン◯」の意味
中米のホンジュラスや南米のコロンビアでは、「No.1」「No.2」などの数字で粒度や欠点数を示します。また「スクリーン18」「スクリーン16」などは豆のふるい分けサイズを表します。これらの表記は豆の均一性を示す目安に過ぎず、味わいの良し悪しを保証するものではありません。
国別表記は味を保証しない理由
同じ等級でも、収穫年や精製、保管状態によって品質は変化します。たとえば同じ「AA」でも新豆と古豆では風味が異なります。そのため、グレード表記だけを基準に選ぶのではなく、焙煎日や販売店の情報もあわせて確認することが大切です。
具体例:ケニアAAとグアテマラSHBを比較すると、どちらも高級グレードですが、味の方向性はまったく異なります。ケニアAAは柑橘のような酸味、SHBはチョコレートやナッツのような甘み。ラベルのアルファベットだけで選ぶと、意外な味の違いに驚くこともあります。
- グレード表記は国ごとに基準が異なる
- 中南米は標高、アフリカは粒サイズが基準
- アジアは欠点数や選別精度が基準
- 同じ表記でも味の傾向は違う
- 焙煎や保管の方が風味に影響しやすい
スペシャルティコーヒーを深掘りする
ここからは、コーヒーの最高ランクとされる「スペシャルティコーヒー」について詳しく見ていきます。世界共通の基準を持ち、透明性のある流通と品質管理が特徴です。グレードの最上位に位置するこの分類は、単なる高級豆ではなく「生産者から消費者までのストーリー」を重視した考え方に基づいています。
定義と範囲:スペシャルティの基準
スペシャルティコーヒーとは、SCA(スペシャルティコーヒー協会)が定めた評価で、100点満点中80点以上の豆を指します。欠点がほとんどなく、産地・農園・ロットが明確であることが条件です。つまり、単においしいだけでなく「誰が・どこで・どう作ったか」が追跡できる豆なのです。
Qグレードとの違いと関係性
Qグレードは、CQI(コーヒークオリティインスティテュート)が設けた品質認証制度です。Qグレーダーという資格保持者がカッピングを行い、客観的に品質を判定します。スペシャルティは評価の概念であり、Qグレードは認証の仕組みという関係です。
欠点風味の管理と品質保証
スペシャルティでは、「清潔なカップ」「欠点のない風味」「バランスの取れた酸味」が重要視されます。欠点豆や発酵臭が混ざると、どんなに高地産でも評価が下がります。品質を守るため、農園では手選別や比重選別を何度も行うのが一般的です。
トレーサビリティとサステナビリティ
スペシャルティコーヒーは「誰がどのように作ったか」を明示できることが特徴です。生産者への正当な報酬や環境保護への取り組みも評価対象となります。こうした持続可能な仕組みが、スペシャルティの価値を支える根幹です。
ミニQ&A:
Q1. スペシャルティとプレミアムの違いは?
A1. プレミアムは一定の品質を保った商業豆、スペシャルティは個性と透明性を備えた高品質豆です。
Q2. Qグレードの豆は全部スペシャルティ?
A2. ほとんどは重なりますが、評価機関や目的が異なります。Qグレードは客観的認証、スペシャルティは風味基準を指します。
- スペシャルティはSCA基準80点以上が条件
- QグレードはCQI認証による品質評価
- 欠点豆の混入が品質を大きく下げる
- トレーサビリティと持続性が重要
- 高品質=高価格とは限らない
選び方ガイド:家庭で失敗しない実用基準
ここでは、コーヒー豆のグレードを理解したうえで、家庭で豆を選ぶ際に役立つ実践的な基準を紹介します。高級グレードを選べば必ずおいしいとは限らず、使用する器具や焙煎度との相性も大切です。自分の飲み方に合ったバランスの良い選び方を覚えましょう。
用途と予算からの選び分け
毎日の朝コーヒーや来客用など、用途によって選ぶ豆は変わります。たとえば「毎日飲む」ならコモディティ〜プレミアムクラスで十分満足できます。一方、特別な日の一杯を楽しむならスペシャルティグレードがおすすめ。価格差は100gあたり300〜800円程度が目安です。
初心者向けの覚え方フレーズ
グレードを覚えるコツは「高い山ほど硬い豆、粒がそろえば良い豆」と覚えることです。標高が高い=豆が締まって風味が良く、欠点が少ない=焙煎が安定します。難しい用語を覚えなくても、この原則を意識するだけで選びやすくなります。
焙煎度との相性(浅煎り・中煎り・深煎り)
高グレードの豆は風味が繊細なため、浅煎り〜中煎りで特徴を引き出すのが一般的です。深煎りにすると香りより苦味が強調されることがあります。一方で、欠点が少ない豆は深煎りにしても雑味が出にくく、安定した味を保ちやすい傾向にあります。
店頭・通販ラベルのチェックポイント
豆の袋を見るときは、「産地」「品種」「精製方法」「焙煎日」「グレード表記」の5点を確認しましょう。特に焙煎日は鮮度の指標となります。スペシャルティと書かれていても、焙煎が古いと本来の風味が損なわれます。
よくある勘違いの回避策
「高い豆=自分好み」とは限りません。酸味のある豆が苦手な人は、あえて標高の低い産地を選ぶと飲みやすい場合もあります。グレードよりも、自分の味覚との相性を優先することが長く楽しむコツです。
ミニQ&A:
Q1. スーパーの豆にもグレード表記はある?
A1. 国内流通では明記されていないことが多いですが、輸入元や販売店に確認できます。
Q2. 初心者が選ぶならどのグレード?
A2. スペシャルティにこだわらず、プレミアムクラスの中煎りから試すのが安心です。
- 用途・予算でグレードを選ぶと無理がない
- 「高い山ほど硬い豆」と覚えると理解しやすい
- 焙煎度と豆の個性を合わせると味が安定する
- ラベルは産地と焙煎日を優先して確認
- 高グレード=好みとは限らない
品質を左右する前後工程を知る
コーヒー豆の品質は、栽培から焙煎までのすべての工程に影響されます。どんなに高いグレードでも、収穫後の扱いが雑だと風味は落ちてしまいます。ここでは、豆の品質を保つために欠かせないプロセスを順を追って見ていきましょう。
収穫と選別(ハンドピック等)の重要性
収穫では完熟した赤い実(チェリー)のみを手摘みすることが理想です。未熟豆や過熟豆が混ざると、焙煎時にムラが出て風味が不安定になります。高品質な農園ほど、収穫後に複数回のハンドピックで欠点豆を除去します。
精製・乾燥プロセスの管理
収穫後の精製(果肉除去・洗浄)と乾燥の工程も非常に重要です。ウォッシュト方式はクリーンな味わい、ナチュラル方式はフルーティな風味が特徴です。どちらも温度と湿度の管理が不十分だと発酵臭やカビの原因になります。
保管・輸送(クロップ年・環境)の影響
コーヒー豆は湿度や温度に敏感です。生豆は麻袋で通気性を保ちながら、20℃以下・湿度60%程度で保管されます。輸送時に高温多湿の環境にさらされると品質が落ちるため、輸送条件もグレード維持には欠かせません。
焙煎後の鮮度維持と家庭での扱い
焙煎後は酸化が進みやすく、2週間を過ぎると香りが減少します。密閉容器で冷暗所に保管し、できるだけ早く使い切ることが理想です。冷凍保存も可能ですが、取り出す際の結露に注意が必要です。
| 工程 | 目的 | 注意点 |
|---|---|---|
| 収穫 | 完熟豆の選別 | 未熟豆混入で風味が落ちる |
| 精製 | 果肉や異物の除去 | 水質と温度管理が重要 |
| 乾燥 | 保存性を高める | 湿気が残るとカビの原因 |
| 保管 | 品質維持 | 温度・湿度・光に注意 |
| 焙煎後 | 風味保持 | 早めの消費と密閉保存が基本 |
具体例:エチオピア産G1豆を購入した場合でも、焙煎後に数か月放置すればグレードの意味がなくなります。豆のポテンシャルを引き出すには、購入から2週間以内に飲み切るのが理想です。
- 収穫・精製・乾燥の精度が品質を左右する
- クロップ年と輸送状態も重要
- 焙煎後は2週間を目安に使い切る
- 冷凍保存は結露対策を忘れずに
- グレードは適切な管理で維持される
よくある質問(FAQ)
ここでは、コーヒー豆のグレードに関してよく寄せられる質問を整理しました。専門的な内容を避けながら、購入や保存の際に役立つ実践的な回答を紹介します。豆選びに迷ったときの参考にしてください。
ブルーマウンテンやハワイコナはなぜ高いのか
ブルーマウンテンやハワイコナが高価な理由は、品質そのものに加えて「生産量の少なさ」と「ブランド価値」にあります。特にブルーマウンテンはジャマイカの特定地域(ブルーマウンテン地区)でしか生産されず、出荷量も限られています。そのため市場での流通量が少なく、希少性が価格を押し上げています。
グレードと価格は比例するのか
一般的には高グレードほど価格が高くなりますが、必ずしも味が上とは限りません。スペシャルティでも好みが分かれ、浅煎りが苦手な人には「飲みにくい」と感じることもあります。つまり、価格よりも自分の味覚との相性を重視することが満足度を高める近道です。
家庭でできる欠点豆の見分け方
欠点豆は見た目でもある程度判別できます。黒ずんだ豆やひび割れた豆、極端に小さい豆は焙煎ムラや苦味の原因になります。購入後にざっと目視で取り除くだけでも、仕上がりの風味がぐっと安定します。特に浅煎りでは欠点豆の影響が出やすいので注意が必要です。
長期保存でグレード感は落ちるのか
はい、落ちます。高級グレードの豆でも、焙煎後に時間が経つと酸化や湿気によって香味が劣化します。未開封でも3か月以上経過すると風味が鈍くなりがちです。冷凍保存を併用しても、開封・解凍の際の結露対策が不可欠です。グレードを保つ最大のコツは「早めに飲み切る」ことです。
ミニQ&A:
Q1. グレード表記がない豆は品質が悪い?
A1. 必ずしもそうではありません。国内焙煎店では輸入時の等級を明記しないケースも多く、味で勝負している店もあります。
Q2. スペシャルティの豆は初心者でも扱える?
A2. はい。むしろ焙煎が安定しているため、家庭でも失敗しにくい傾向があります。価格よりも使う量を調整して楽しむのがポイントです。
- 高価格豆は希少性とブランドが要因
- グレードと価格は必ずしも比例しない
- 欠点豆は見た目で除去できる
- 保存期間が長いと香味が劣化する
- スペシャルティは扱いやすく初心者にもおすすめ
まとめ
コーヒー豆のグレードは、豆の品質を客観的に示すひとつの指標ですが、それだけで味や満足度を決めるものではありません。標高や粒の大きさ、欠点豆の数など、各国で異なる基準があり、その背景には気候や流通の事情も関わっています。
重要なのは、グレード表記を「味の目安」として活用しつつ、自分の好みや淹れ方に合わせて選ぶことです。高グレードの豆ほど繊細な風味が楽しめますが、保存や焙煎の状態によってはその魅力が十分に発揮されない場合もあります。家庭での保存や抽出の工夫が、最終的なおいしさを左右します。
本記事を通じて、コーヒー豆のグレードを理解し、自分に合った一杯を見つけるための判断基準を身につけていただければ幸いです。


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