カフェの内装工事は、すべてを業者に任せなくても開業できます。内装業者に一式を依頼すると、デザイン料・現場管理費・各種経費が上乗せされ、スケルトン物件では坪単価37万〜84万円という費用感になることも珍しくありません。一方で、業者の役割を自分で担い、必要な職人を個別に手配する方法をとれば、同じ規模でも費用を大幅に圧縮できます。
この記事では、カフェの内装工事を自分で進める際の全体の流れを整理します。DIYできる箇所と資格が必要な専門工事の仕分けから、図面の作成、業者手配の方法、消防署・保健所への届出まで、開業前に知っておくとよい項目をまとめました。
費用を抑えながら自分らしいお店をつくりたい方に、ひとつの判断軸として役立てていただければ幸いです。
カフェの内装工事を自分でやるとどのくらい費用が変わるか
内装業者に一括依頼した場合と、自分で業者を手配した場合では、費用に大きな差が生まれます。どの部分でコストが変わるのかを把握しておくと、自分でやる範囲を判断しやすくなります。
内装業者に依頼した場合の費用感
カフェをスケルトン物件で開業する場合、内装工事費用の坪単価は目安として37万〜84万円程度です。居抜き物件でも坪15万〜40万円前後かかるとされています。
この金額には、施工費だけでなくデザイン設計費・現場管理費・資材の中間マージン・運搬費・清掃費などが含まれています。実際の施工は大工・電気工事士・水道工事士などの職人が行うため、内装業者は「手配と管理」に費用をとる構造です。
自分で手配した場合にどのくらい変わるか
内装業者が担っている「デザイン・資材手配・職人手配・施工管理」の役割を自分で担うと、費用は半額近くになることがあります。60平米・26席規模の飲食店をDIYで開業した事例では、内装工事費用を20万円程度に抑えながら総開業費500万円程度に収まったケースもあります。
業者に依頼した場合は同規模で少なくとも300万円以上の追加費用が見込まれるため、DIY導入による節約効果は小さくありません。ただし、これはDIY可能な工程と専門工事を正しく仕分けることが前提です。
費用が変わる理由と注意点
費用差が生まれる主な理由は、内装業者が乗せる管理コストを省けることと、資材を自分で調達できることです。壁紙を自分で購入・施工した場合、材料費は数万円で済みますが、業者に依頼すれば数十万円になることもあります。
一方で、電気工事・水道工事・ガス工事は資格が必要な専門工事です。これらは自分で施工することができず、必ず有資格の業者に依頼しなければなりません。DIYの範囲を資格不要の作業に絞ることが、安全かつ法令に沿った進め方です。
業者依頼が必要な工程:電気工事・水道工事・ガス工事(それぞれ有資格者が必要)
- >内装業者への一括依頼では管理コスト・デザイン料が費用の大部分を占める>職人を自分で手配するだけで費用が半額近くになる場合がある>電気・水道・ガスの施工は資格が必要なため必ず業者に依頼する>DIYで節約できる部分と業者依頼が必要な部分を最初に仕分けておくことが大切
内装工事を始める前に準備する図面と届出
内装工事を自分で進める際、最初にやっておくべきことが図面の作成と行政への届出です。図面は職人への指示書であると同時に、消防署・保健所での手続きにも使う共通の資料になります。
作成する図面は2種類
準備する図面は「店舗レイアウト図」と「店舗外観のラフ画」の2つです。どちらも手書きで構いませんが、サイズはミリ単位まで正確に記入します。図面作成にCADなどの専門ソフトは必須ではありません。
レイアウト図には、厨房機器・シンク・カウンター・客席・トイレなどの配置と寸法をすべて記載します。あわせて、電源を設置したい位置(高さを含む)と上下水の位置も書き込んでおくと、電気・水道業者との打ち合わせがスムーズです。外観のラフ画は、貸主への工事許可の申請にも使います。
消防署への工事届出
テナントで内装工事を行う場合、工事開始日の7日前までに消防署へ「工事計画の届出」を提出する必要があります。書式は消防署でダウンロードでき、2部作成して持参する形が一般的です。
このとき、防火対象物使用開始届出書もあわせて提出しておくと後の手続きが省けます。焙煎機など特殊な機器を設置する場合は仕様書の提出を求められることもあるため、設置する機器が確定したら早めに消防署に相談するとよいでしょう。
保健所への事前相談
飲食店の営業許可は保健所から取得します。許可申請に先立って、シンクのサイズ・手洗い設備の位置・扉付き戸棚の設置・トイレの動線などが基準を満たしているかを事前に確認することが大切です。
喫茶店営業の許可申請では、食器洗い用の二槽シンクおよび手洗い用シンクの設置が求められることがあります。保健所によって要件が異なる場合があるため、レイアウト図を持参して担当者に確認しましょう。最新の要件は最寄りの保健所の公式窓口でご確認ください。
| 届出・手続き先 | 内容 | タイミング |
|---|---|---|
| 消防署 | 工事計画届出書・防火対象物使用開始届出書 | 工事開始7日前まで |
| 保健所 | 飲食店営業許可申請・事前相談 | 工事前に相談、完成後に申請 |
| 貸主(家主) | 工事内容の許可確認 | 工事前(外観ラフ画を提示) |
- >レイアウト図と外観ラフ画は手書きでよいが、寸法はミリ単位で正確に記入する>工事開始7日前までに消防署へ届出を提出する>保健所の設備要件は自治体によって異なるため、着工前に必ず事前相談する>動力電源(三相200V)が必要な場合は電力会社への申請が別途必要になる
自分でできる内装工事の進め方
工事の全体像と図面が整ったら、実際の施工に入ります。各工程の順序と注意点を把握しておくと、工期のずれや手戻りを防ぎやすくなります。以下では、DIYで担える工程を中心に整理します。
壁紙・塗装の施工
壁紙の張り替えはDIYで行いやすい工程のひとつです。既存の壁紙をはがし、裏紙が残る状態を保ちながら新しい壁紙を貼っていきます。生のり付きの壁紙を使えば、業者が使うものとほぼ同等の仕上がりが期待できます。施工方法はYouTube動画などで詳しく解説されているため、未経験でも取り組みやすい作業です。
塗装も自分で行えます。色の選定時の注意点として、見本の小さい面積で見る色と、実際に広い壁に塗った際の色では印象がかなり異なります。同じ色でも広い面積に塗ると濃く見えるため、希望する色よりやや薄い塗料を選ぶとよいでしょう。
床材(クッションフロア等)の施工
床材の施工もDIYで対応できます。クッションフロアは壁紙と同様の手順で施工でき、仮敷きして寸法を確認してから接着剤で固定していきます。既存の床材をはがす作業は壁紙よりも力が必要なため、時間に余裕を持って進めるとよいでしょう。
下地の素材によっては専用の接着剤が必要になる場合があります。コンクリート下地かクッションフロア下地かで使用する接着剤が異なるため、購入前に素材を確認しておくことが大切です。
カウンター・棚・家具の手配と製作
カウンターや棚などの造作物は、内装業者に依頼すると設計費・資材費・大工の人件費が重なり高額になります。セミオーダーの家具屋に依頼する方法では、サイズをミリ単位で指定して製作してもらえます。ヤフオク・minne・Creemaなどのプラットフォームで個人・事業者の出品を探すと、希望に近いものを見つけやすいです。
壁や天井に固定する造作物(扉付き戸棚など)は、保健所の営業許可要件に関わる場合もあります。設置位置と仕様を決めたうえで、大工に依頼するか自分で製作するかを判断するとよいでしょう。
カウンターや棚はセミオーダー家具で対応し、ホームセンターでの木材カット(無料サービスあり)と組み合わせると費用をさらに抑えられます。
- >壁紙・塗装・床材施工はDIY対応の代表的な工程で、資材を自分で調達すれば材料費は数万円〜>壁の色は広い面積に塗ると濃く見えるため、見本よりやや薄い色の塗料を選ぶとよい>カウンター・棚はセミオーダー家具を活用すると設計費と人件費を省ける>壁・天井への造作固定物は保健所要件と照合して仕様を決める
必ず業者に依頼する専門工事の手配方法
電気・水道・ガスの工事は、資格を持つ業者でなければ施工できません。これらは自分で手配することは可能ですが、施工そのものは必ず有資格者に任せる必要があります。手配の流れを把握しておくと、工期のスケジュールを組みやすくなります。
電気工事の手配と注意点
電気工事は近隣の電気工事業者をインターネットで探すか、職人マッチングサービス(クラフトバンクなど)で依頼します。打ち合わせの際は、レイアウト図に電源の設置位置・高さを書き込んだものと、使用する機器の型番・定格消費電力・定格運転電流の一覧を用意するとスムーズです。
業務用エアコンや大型厨房機器を使用する場合、単相200Vや三相200Vの電源が必要になることがあります。建物に動力(三相200V)が引き込まれていない場合は電力会社への申請と引き込み工事が別途必要となり、申請から完了まで1か月以上かかることがあります。早い段階で確認しておくと安心です。
水道工事の手配と注意点
水道工事も近隣の業者に依頼します。主な依頼内容は食器洗い用シンク・手洗い用シンク・トイレ・浄水器・湯沸かし器の設置・製氷機への接続です。シンク本体や浄水器は自分でネット購入してから設置だけを依頼すると、費用を抑えやすくなります。
製氷機には必ず浄水を通した水を接続します。未処理の水道水を直接接続すると故障の原因になります。また、製氷機の排水には勾配が必要なため、設置場所に制限が出ることがあります。保健所の要件と合わせて設置位置を決めましょう。
ガス工事の手配と注意点
ガス工事はガス会社の協力会社でなければ施工できません。使用するガス会社に連絡して、紹介を受ける形で手配します。ガスコンロや業務用焙煎機の設置を計画している場合は、早い段階でガス会社に相談しておくとよいでしょう。
業務用ガス機器を設置する場合は、消防署への届出時に仕様書の提出を求められる場合があります。排気ダクトの経路もレイアウト図に記載しておくと、消防署との確認がスムーズです。
手配・段取りは自分でできますが、施工は必ず有資格の業者に依頼してください。
- >電気工事は機器リスト(型番・消費電力)を用意して業者と打ち合わせする>動力(三相200V)が必要な場合は電力会社への申請が必要で、1か月以上かかる場合がある>水道工事では製氷機への浄水接続と排水勾配に注意が必要>ガス工事はガス会社の紹介を通じて協力会社に依頼する
工程全体のスケジュールと費用をまとめて把握する
内装工事を自分で進める場合、各工程が並行して動くため、全体スケジュールを事前に整理しておくことが大切です。工期のずれが開業日に直結するため、余裕を持ったスケジュール設計が必要です。
工程の標準的な進め方
一般的な進め方として、最初に図面を作成し、貸主への許可確認と消防署への工事計画届出を済ませます。その後、電気・水道・ガスの業者と日程調整を行い、工事期間中に壁・床のDIY施工を並行して進めます。最後に家具・厨房機器の搬入と設置を行い、保健所の現地確認を経て営業許可を取得する流れです。
60平米規模のテナントでDIYを取り入れた事例では、テナント契約から開業まで約2か月で完了しています。DIY未経験者が一人で壁・床・カウンターを施工した場合でも、1か月程度の工期が一つの目安です。
費用の内訳と目安
費用は工程ごとに大きく異なります。DIYで対応した部分(壁紙・床材・カウンター)の材料費は合計20万円程度に収まるケースがある一方、水道工事は設備費込みで50万〜60万円程度が一つの目安です。厨房機器は業態・規模によって大きく変動します。
開業にかかる総費用は物件費・設備費・運転資金も含めると、小規模カフェでも400万〜500万円程度を想定しておくことが一般的です。詳細な費用計画は、工事前に各業者から相見積もりを取ることで精度を上げられます。
ミニQ&A
Q. DIY経験がなくても壁紙の張り替えはできますか?
生のり付き壁紙であれば未経験でも施工できます。施工方法は動画解説が豊富にあり、道具はカッターナイフ・ローラー・ヘラなど数千円で揃えられます。ただし切れ味の良いカッターと替刃を十分に用意しておくとよいでしょう。
Q. 内装工事をDIYで行うと工期はどのくらい変わりますか?
DIYは同時進行で進める作業が多く、体力的な負担もあります。業者一括依頼より柔軟に調整できる反面、開業日を告知した後のスケジュール変更は難しいため、余裕を持った工期設定が必要です。1か月以上のバッファを確保しておくと安心です。
- >図面作成→貸主許可→消防署届出→業者手配→DIY施工→家具搬入→保健所申請の順で進める>60平米規模の場合、契約から開業まで2か月が一つの目安>DIY部分の材料費は数万〜20万円程度、水道工事は50万〜60万円程度が参考値>業者からは相見積もりを取って比較することが大切
まとめ
カフェの内装工事を自分で手配・施工する方法は、費用を大幅に抑えながら開業する現実的な選択肢のひとつです。内装業者に一括依頼しなくても、職人を個別に手配し、DIY可能な部分を自分で施工することで、同規模でも費用を半額近くに抑えられるケースがあります。
まず取り組むとよいのは、店舗のレイアウト図を手書きで作成することです。図面があれば電気・水道業者との打ち合わせも、消防署・保健所への相談もスムーズに進みます。DIYと業者依頼の仕分けを決めてから工期全体のスケジュールを組むと、開業日に向けた準備がより具体的になります。
開業を検討しているみなさんが、費用と手間のバランスを取りながら自分らしいカフェを形にするための一助になれば幸いです。内装工事の詳細な要件(設備規格・届出様式など)は、必ず最寄りの保健所・消防署の公式窓口でご確認ください。
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