独立してから一年3カ月。現役のバリスタとして働いていた頃と今の独立した自分と比べた事や感じたことを書きました。

一つ目はやっぱりこれ、決定的な違いはお金に関して意識が変わったこと。これは独立というものが何たるかを教えてくれました。
二つ目は、コーヒーに対して価値観が変わったこと。それは味の追及は怠ってはいけないけども最優先ではない現実を思い知りました。
三つ目は、人脈と信頼関係の構築と継続。これは信じられない位ボディのようにじわりじわりと効いて来るし、一瞬で吹っ飛ぶこともあります。
四つ目は、様々な事に対する精神力のタフさ。いかなる事に見舞われても挫けないこと。そして、助けてくれる仲間がここでも効いてきます。
五つ目は、継続的に仕事があること。想像以上に大変なので体力(金銭)が必要だし、最低限商いに関する知識と売り込む度胸。
六つ目は、良識ある社会人としての節度と対応。本当の意味で色々な場面で試される時がかなりあります。日々勉強ですね、まずは世間のニュースチェックから。
七つ目は、人の目利き。多くの人と接する中で誰とでも仲良くすればいいってもんじゃない。時にはしっぺ返しに見舞われるのでそこも辛いけど勉強。
八つ目は、情報発信の難しさ。SNSを利用した発信をすること。これは未だに勉強中で仕事の一環だが、仕事っぽくやりすぎると逆効果なので上手な人を手本にする。
九つ目は、仲間がいること。独立すると考え方の問題で一般の人や友達や身内と会話がズレてくる。結果的に経営者同士で友達のような間柄になれば一番楽しい。
最後は、世の中の仕組みを多くの人から学び・知ること。そして今やっている事が本当に世の中に取って価値があるべきものなのか理解して実行できることじゃないかと今は思っています。

最近、百獣の王である武井壮さんが非常に興味深い話を講義していました。
「どんなに何かが凄くても世の中にとって価値として見られなければ、それは価値がないと言うこと」これには、胸に大きな穴を打たれた気分でした。何故かというと、独立してから濃い日々を過ごしてきた中で少しづつ何かに引っかかってたからです。

バリスタは何に価値があるのか…どんな未来が想像できるのか。

一般的なバリスタという職業はバイトで相場900円前後でしょうか。週2日休みで一日8h働いても月16万程度、年収200万円前後になります。ほとんどバイトなんかは実家暮らしかシェアハウスとかで暮らさない限り生活はできないし、それが社員雇用であれば年収300万円は超えるでしょうが、そこら辺が頭打ちでしょう。実際に僕も姉弟で住んでいたので、バイト時代はなんとかやりくりしてましたが時には家族の援助で何とか生活できていました。どんなに一生懸命努力して有名なバリスタになったとしても業界で有名になるだけで個人にとってそれだけで金銭的価値が生まれるものではありません。だからそこに大事な人生をお洒落だからとか楽しそうだからとかでコーヒーだけに全部注ぐようなことはやって欲しくないのが本音です。

ただ勘違いしないでほしいのがバリスタが悪いってことじゃなくて、そこも楽しいからやっていいけどちゃんとした生活も楽しみたいのならコーヒー以外の部分も勉強した方がいいよってこと。簡単なとこだとお店の経営方法ってどうなっているのか、店舗や商品のコンセプト、商品の見せ方、空間づくり、スタッフの育て方やコミュニケーション能力、お客との接客サービス、挙げたらきりないけどもコーヒー以外に大事なものって滅茶苦茶あります。これは雇用で生涯を終える人でもあてはまると思ってて、コーヒーが美味しくできるだけではただドリンクが上手なスタッフというだけでそれ以上にはなりません。会社からすればお客のためにとって良いこと=それがお金として返ってくるからこそ大切なこととして見ますがスタッフの金銭価値があがるわけではないです。理想なのはコーヒーはプロとしてのレベルはありつつ他の能力(管理能力や数字に強い)が長けている人が組織で上に立ち金銭的価値も生みます。

そして、独立しても同じようなことが言えますが特殊な世界でもあります。例えば珈琲屋であれば、味はお金を頂けるレベルに達してれば十分で重要なのは差別化。そこには経営・管理能力は前提の上でアイディアが重要。生き残って成長している店舗や企業はここが強いと本当に感じるし、努力した分だけアイディアが出るというわけではないのでここがセンスというか分かれ目なのかなと。ただ生き残るだけでも勉強や努力は必ずやっていているのであしからず。コーヒーの分野だけじゃないけど何か大きく動かすには組織で動く必要があって、バリスタが影響を及ぼせるのは極々小さいものです。ここに痛感したのは想像だに及びません。

だからというわけではないですが、バリスタが美味しいコーヒーを淹れるだけじゃなくてもっと違う影響力を持てば価値が見い出せるのはないかと常日頃考えます。

今の僕は、コーヒーの原料である生豆の仕事に力をいれています。もちろん、バリスタがベースにあるのでそこをどう生かすか今も試行錯誤の毎日ですが無駄にはなっていません。来年の1月には、コロンビアに一カ月近く行って観光のような農園体験じゃなくリアルな生産の様を勉強しに生産者の方々と一緒に足手まといになるかもしれないけど働いてきます。そして、自分がコーヒーにとってどんな価値を上乗せできるのか…がむしゃらにやってきます。独立した以上はやっぱり両親に旅行をプレゼントできるくらい稼ぎたいし、やっぱり自分もいい車や家に住んでみたいという想いもあるし…そのうえでコーヒーの仕事も楽しみたいのが自分の人生なので真っ黒に焼けて帰ってきます。